くすの木 5月号
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「あまねくいっさい」の様子〈インタビュー:岡本/文責:福地〉2「いーはとーぶ」にて利用者の健康管理を行えるのはもちろん、ショートステイ(医療型短期入所)の運営も可能となりました。一口に医療的ケア児といっても、軽度から重度まで様々で、重度になると人工呼吸器や胃ろうをつけ、たん吸引が常時必要な場合もあります。こういった重度の子どもたちを預けられる施設が県内ではまだまだ少なくて、医師や看護師など専門職のスタッフが揃った手厚い態勢は、保護者の皆さんが待ち望んでいたことでした。一般社団法人 あまね 代表理事  大野真如さん1981年熊本県生まれ。福岡の大学病院で看護師として勤務し、日蓮宗勝嚴寺副住職との結婚を機に小城市在住。自らも出家し、障がい福祉への関心から26歳で起業。医療的なケアが必要な障がい児者をサポートする多機能型施設を運営。おおの しんにょ●一般社団法人あまね 「あまねくいっさい」 小城市三日月町金田1177-5 「いーはとーぶ」 小城市三日月町金田1070医療的ケア児者とその家族を支えたい 一般社団法人あまねでは、障がい児や医療的ケア児(医療的なケアが必要な子ども)を支援するために様々な事業を展開しています。活動のきっかけになったのは、看護師時代に未熟児の出産に立ち会った経験や、障がい者の方の葬式を執り行った際、親亡き後は生まれた地域で暮らすのが難しいと知ったこと。そして、私が流産した時、子どもが障がいを持っていたかもしれないと考えた時に、障がい者福祉を自分事として考えるようになりました。 最初に立ち上げたのが、放課後等デイサービス「いーはとーぶ」です。病気や障がいのある子どもたちが、放課後や休日に友達と一緒に楽しく過ごせる場所で、看護師などの専門職が機能訓練を行います。家族に代わって一時的にケアを行うため、一日中つきっきりで見守りをしている保護者さんの休息にもつながります。ちなみに「いーはとーぶ」とは、宮沢賢治が夢見た理想郷のこと。差別なく、誰もが生き生きと過ごせる子どもたちの居場所にしたいという願いを込めました。全国初の多機能型拠点を開設 2021年には、「あまねくいっさい」を開設しました。医療的ケア児は重層的な支援が必要なため、重症心身障がい児の発達支援、グループホーム、クリニックなどを組み合わせた全国初の多機能型拠点です。 クリニックの開設は念願でもあり、佐賀大学医学部附属病院から小児科の先生に出向してもらっています。これにより、子どもの成長に合わせた伴走型支援 当然ですが、子どもたちは身体も大きくなり成長していきます。子どもたちの人生に最後まで寄り添いたいという気持ちがあるからこそ、展開する事業も自然に広がっていきました。 私たちが目指しているのは、どんなに重い障がいがあっても生まれた地域で最後まで笑顔で暮らせる社会の実現です。それは、私たちだけで実現できることではありません。同じような拠点が各地域に増えることが必要で、自分たちの身近に医療的ケア児や障がい者がいることが当たり前だと思える社会になって欲しい。施設を街なかに構えているのも、地域での子どもたちの生活ぶりを知ってもらいたいからです。実は、夫と共に空手指導者として道場も経営して        いて、障がい児の教室を開き、障がいの有無を越えた子どもたちの交流も行っています。こうした子どもたちの笑顔が見たいからこそ、これからも地域に根差した事業を続けていきたいと思っています。生まれた地域で最後まで暮らせる社会に生まれた地域で最後まで暮らせる社会に

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